トリノ王宮 Royal Palace of Turin
イタリア・トリノに立つサヴォイア家の主宮殿。16世紀に起源を持ち、17世紀にカステラモンテ父子がバロック様式で主要部を造営、18世紀にユヴァラが増改築を加えた。1997年、サヴォイア王家の王宮群の一部として世界遺産に登録された。
§1 — 概要概要
トリノ王宮(Palazzo Reale di Torino)は、北イタリア・ピエモンテ州の州都トリノに立つ、サヴォイア家の主たる宮殿である。16世紀に起源を持ち、サヴォイア公国が首都をトリノに移したのち、歴代の宮廷建築家の手で数世紀にわたり拡張・改装が重ねられた。バロックを基調とする荘厳な外観と豪奢な内部空間を備え、隣接する王立武器庫や図書館、聖骸布礼拝堂などとともに、サヴォイア家の権勢を象徴する建築複合を形づくっている。
歴史
宮殿の前身は司教館であり、1584年にアスカニオ・ヴィットッツィがサヴォイア公カルロ・エマヌエーレ1世のために改造の構想を立てた。本格的な造営は17世紀、公妃クリスティーヌ・マリー(マダマ・レアーレ)の時代に進み、宮廷建築家カルロ・ディ・カステラモンテと、その子アメデーオ・ディ・カステラモンテが主要部を完成させた。18世紀に入ると、サヴォイア家の主席建築家フィリッポ・ユヴァラが「鋏の階段(スカラ・デッレ・フォルビチ)」をはじめとする増改築を手がけ、宮殿に後期バロックの洗練を加えた。1946年、建物は国家の所有に移されて博物館となり、1997年には他のサヴォイア家の居城とともに「サヴォイア王家の王宮群」としてユネスコ世界遺産に登録された。
建築的特徴
外観は、装飾を抑えた重厚な前面と整然とした開口部の構成によって、トリノの中心市街に堂々たる正面を見せる。内部は一転して、金箔や鏡、フレスコ画、タペストリーで覆われた華麗なバロック=ロココの空間が連続し、儀礼の場としての格式を示す。ユヴァラによる「鋏の階段」は、二つの階段が交差するように立体的に組まれた劇的な意匠で名高い。宮殿に隣接して、グアリーノ・グアリーニの設計による聖骸布礼拝堂(カッペッラ・デッラ・サクラ・シンドネ)が建ち、キリストの遺骸を包んだと伝わる「トリノの聖骸布」を納めるために造られた。
意義・現在
トリノ王宮は、16世紀から18世紀に至るサヴォイア家の建築的営為が累層的に積み重なった、ピエモンテ・バロックの中核的な記念建造物である。都市と一体に構想された宮殿・広場・街路の関係は、近世の宮廷都市トリノの形成を今に伝える。現在は王立博物館群の一部として一般に公開され、武器庫や図書館とあわせて、サヴォイア家の歴史と芸術を物語る場となっている。