スペイン国王の公式の宮殿。1734年に焼失したアルカサルの跡地に、ブルボン朝のために1738年から建設された。ユヴァラの構想をサケッティが実現した後期バロックの大宮殿で、3000を超える部屋をもつ西ヨーロッパ最大の王宮として知られる。
§1 — 概要概要
マドリード王宮は、マドリードの中心西部、マンサナーレス川を見下ろす台地に建つスペイン王室の公式宮殿である。延床面積はおよそ13万5千平方メートル、部屋数は3000を超え、西ヨーロッパ最大の王宮とされる。現在の建物は、ブルボン朝のために18世紀半ばに新築された後期バロックの宮殿であり、今日では主に国家儀礼に用いられている。
歴史
この地には、9世紀のイスラーム時代の要塞に起源をもつ王城アルカサルが建ち、中世以来スペイン王の居所とされてきた。1734年のクリスマスイヴ、このアルカサルが焼失すると、フェリペ5世はその跡地に、より壮大な宮殿を新たに築くことを決めた。最初の構想を与えたのはトリノの建築家フィリッポ・ユヴァラであったが、巨大に過ぎる計画は実現せず、ユヴァラの没後、弟子のフアン・バウティスタ・サケッティが敷地に見合う正方形平面の案へとまとめ直した。1738年に礎石が据えられ、1755年までに主要部が完成した。1764年にカルロス3世が初めて居住し、その治世にはフランチェスコ・サバティーニが内部装飾と増築を担った。
建築的特徴
宮殿は、中央に大きな主中庭をもつほぼ正方形の平面をとり、堅固な石造の量塊として立ち上がる。外観は後期バロックに古典主義を加味した端正な構成で、基壇となる粗石積みの上にコリント式のピラスターを並べ、屋上の手すり壁には彫像を載せる構想がもたれた。火災の教訓から、木材を極力避けて石とレンガ、ヴォールトで組み上げられている点も特徴である。内部は、ティエポロやメングスの天井画、ロココや新古典主義の諸室、玉座の間など、各時代の最高の工芸で飾られた壮麗な空間が連なる。
意義・現在
マドリード王宮は、スペイン・ブルボン朝の権威を可視化した記念碑であり、イタリア人建築家たちを介してヨーロッパ最新の宮殿建築をマドリードにもたらした作品である。現在、国王一家はここに居住せず、宮殿は国家行事や公式の催しに用いられるとともに、絵画・装飾美術のコレクションを収めて一般に公開されている。スペインの文化財(国指定)に登録され、マドリード有数の観光名所となっている。