聖イサアク大聖堂 Saint Isaac's Cathedral
サンクトペテルブルクの象徴ともいえる、ロシア最大級の正教会大聖堂。フランス出身の建築家モンフェランが1818年から40年をかけて建てた新古典主義建築で、金色のドームが街を見下ろす。
§1 — 概要概要
聖イサアク大聖堂(Исаакиевский собор / Saint Isaac's Cathedral)は、ロシア・サンクトペテルブルクの中心部に立つ、ロシア最大級の正教会大聖堂である。フランス出身の建築家オーギュスト・ド・モンフェランの設計により、1818年から1858年までの40年をかけて建てられた新古典主義建築で、金箔を施した大ドームは市内のほぼどこからでも望める、街の象徴となっている。現在は主に博物館として公開されている。
歴史
この場所に建てられたイサアク聖堂は、四代目にあたる。初代は1710年の木造礼拝堂で、1712年にピョートル大帝がここで再婚した。続く石造の聖堂は地盤の弱さから沈下し、アントニオ・リナルディによる三代目も評価が定まらなかった。1809年、アレクサンドル1世が新たな大聖堂の設計競技を催し、ナポレオン失脚後のパリで皇帝に招かれた若きモンフェランの案が採用された。ネヴァ川に近い軟弱な地盤を固めるため約24,000本の杭が打ち込まれ、巨大なコリント式のポルティコの円柱は、技師ベタンクールが考案した轆轤(ろくろ)装置で立て起こされた。1858年5月30日に成聖され、40年を捧げたモンフェランはその直後に世を去った。ソビエト期の1931年には「宗教と無神論の博物館」とされ、ドームにはフーコーの振り子が吊るされた。第二次世界大戦の包囲下では、爆撃の目標になるのを避けるため、金のドームが灰色に塗られたという。
建築的特徴
平面はギリシア十字を基本とし、四方に巨大なコリント式の円柱列を備えたポルティコが張り出す。柱は一本ずつが赤色花崗岩の一枚石で、高さ約15m・重さ約100トンにおよぶ。中央の金色ドームは三重の殻からなり、その骨組みには鋳鉄が用いられた。これは建築用の鋳鉄ドームとしては歴史上きわめて早い例の一つである。ドームの基部を囲む回廊は地上約43mの展望台となっており、市街を一望できる。内部は十数種の大理石やマラカイト、ラピスラズリ、金箔で覆われ、当初の壁画は寒湿による劣化のため、後にモザイクへと置き換えられていった。
意義・現在
聖イサアク大聖堂は、ローマのサン・ピエトロ大聖堂やロンドンのセント・ポール大聖堂と並び称される大ドーム建築であり、帝政ロシアの威信と19世紀の建設技術を体現する。鋳鉄構造や、電鋳によってつくられたドーム周囲の天使像など、当時の新技術が随所に導入された点でも建築史上重要である。ソビエト期以降は博物館として保存され、現在も特定の祝祭日には礼拝が行われる。サンクトペテルブルク歴史地区の構成資産として、世界遺産にも登録されている。