ザルツブルク大聖堂 Salzburg Cathedral
オーストリア・ザルツブルクの大司教座大聖堂。1614年に起工し1628年に献堂された初期バロック建築で、アルプス以北で最初期の本格的バロック大聖堂に数えられる。モーツァルトが洗礼を受けた聖堂としても名高い。
§1 — 概要概要・位置づけ
ザルツブルク大聖堂(Salzburger Dom)は、オーストリアのザルツブルク旧市街の中心に建つ、ローマ・カトリックの大司教座聖堂である。17世紀前半に建設された初期バロック様式の聖堂であり、アルプス以北で最初期に実現した本格的なイタリア風バロック建築の一つとして、建築史上重要な位置を占める。
歴史
大聖堂の起源は774年、聖ウィルギリウスが献堂した初代聖堂に遡り、その後もたびたび火災と再建を繰り返した。決定的な転機となったのは1598年の大火で、これにより中世以来の聖堂が焼失する。大司教ヴォルフ・ディートリヒは当初イタリアの建築家ヴィンチェンツォ・スカモッツィに再建案を委ねたが、この計画は実現しなかった。続く大司教マルクス・シッティクスのもとで、コモ近郊出身の建築家サンティーノ・ソラーリが新たな設計を担い、1614年に礎石が据えられ、1628年に献堂式が行われた。1944年の空襲で交差部のドームが破壊されたが、戦後に修復され、1959年に再び奉献されている。
建築的特徴
平面はラテン十字形をとり、交差部には堂々たるドームが架かる。二基の塔を備えた正面ファサードは、地元産の大理石によって白く仕上げられ、彫像を配した重層的な構成が初期バロックの荘厳さを示す。内部は白を基調とし、スタッコ(化粧漆喰)による繊細な装飾と天井画が広がる明るい空間で、イタリア・バロックの空間感覚をアルプス以北にいち早く移植した実例として評価される。
意義・現在
ザルツブルク大聖堂は、1756年にこの地で生まれたヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが洗礼を受けた聖堂であり、後に彼が宮廷オルガニストを務めた場でもある。市街全体が1996年にユネスコ世界遺産「ザルツブルク市歴史地区」として登録され、その中核をなす記念碑的建築として、今日も大司教座聖堂としての役割を果たし続けている。