ドイツ、フランクフルト・アム・マインにあるヨーロッパ有数の自然史博物館。1904年から1907年にかけて建築家ルートヴィヒ・ネーアーが設計した砂岩造のネオ・バロック建築で、大型恐竜の骨格展示で広く知られる。
§1 — 概要概要
ゼンケンベルク自然博物館(ドイツ語: Naturmuseum Senckenberg)は、ドイツのフランクフルト・アム・マインにある自然史博物館で、ドイツ国内では有数、ヨーロッパでも屈指の規模を誇る。母体は1817年に市民有志が創設したゼンケンベルク自然研究協会であり、その名は18世紀の医師・寄進者ヨハン・クリスティアン・ゼンケンベルクに由来する。約6,000平方メートルの展示空間には数千点の標本が並び、とりわけヨーロッパ最大級の大型恐竜骨格の展示で知られる。
歴史
協会の自然標本コレクションは市内のエッシェンハイマー塔近くに置かれていたが、収蔵品の増大により手狭となり、1904年、フランクフルト中心部の外縁に新たな展示館の建設が始まった。設計は地元で活動した建築家ルートヴィヒ・ネーアーが担い、1907年10月13日に新館が開館した。落成に際してはアメリカ自然史博物館からディプロドクスの実物骨格が寄贈され、同館初の恐竜展示として開館当初からの目玉となった。新館は、同じくネーアーが手がけ後にゲーテ大学本館となるユーゲルハウス(1906年)と同時期の仕事である。1944年3月には空襲で被災し、窓・扉・収蔵棚が破壊されたが、主要な標本は疎開して難を逃れた。
建築的特徴
建物は、19世紀末から20世紀初頭に流行した歴史主義の一様式であるネオ・バロックによる、砂岩造の記念碑的な建築である。重厚な石造ファサードの中央には、主入口の上にペディメント(破風)が掲げられ、そこにはギリシア・ローマ神話に取材した彫像がはめ込まれている。屋根は急勾配のマンサード屋根をいただき、全体として、新興する市民科学と大学都市フランクフルトの文化的威信を誇示する堂々たる構えをとる。装飾の主題に自然や神話の図像を選んだ点に、科学の殿堂にふさわしい意匠が読み取れる。
意義・現在
ゼンケンベルク自然博物館は、展示を担う博物館と研究を担うゼンケンベルク研究所とを組織的に分けつつ密接に連携させる運営を、新館への移転とともに確立した。これは、最新の研究と切り離された「サイエンスセンター」になることを避け、研究と公開を両立させようとする思想の表れである。今日では18種に及ぶ復元恐竜が並び、繊毛の痕跡を残すプシッタコサウルスの化石など学術的に重要な標本も収蔵する。前庭にはティラノサウルスの実物大模型が置かれ、歴史主義の館とその前に立つ太古の生物という対比が、来館者を迎えている。