聖ミカエル教会(ヒルデスハイム) St. Michael's Church
ドイツ、ヒルデスハイムに残る初期ロマネスク(オットー式)建築の傑作。司教ベルンヴァルトが1010年に着工した二重内陣のバシリカで、円柱と角柱の交替と、正方形の交差部を基準とする明快な比例で知られ、1985年にユネスコ世界遺産へ登録された。
§1 — 概要概要
聖ミカエル教会(Michaeliskirche)は、ドイツ北部ニーダーザクセン州の都市ヒルデスハイムに建つ、初期ロマネスク(オットー式)建築を代表する聖堂である。ヒルデスハイム司教ベルンヴァルトが営んだベネディクト会修道院の中心聖堂として、11世紀初頭に建てられた。明快な幾何学的秩序と、装飾に頼らない量塊の美しさによってロマネスク建築の規範を早くから示した作例として名高く、1985年にヒルデスハイム大聖堂とともにユネスコ世界遺産に登録された。
歴史
建設は、芸術の庇護者として知られた司教ベルンヴァルトの主導により、1010年に市街北方の丘で始まった。ベルンヴァルトは堂内のために青銅の大扉や記念柱を鋳造させるなど造営に深く関与したが、完成を見ることなく1022年に没した。事業は後継の司教ゴーデハルトに引き継がれ、1031年に竣工して同年9月29日に再奉献された。その後1186年には火災後の修復を経て改めて奉献され、宗教改革期の16世紀には、身廊をルター派が、クリプタをカトリックが用いる共同使用の聖堂となった。1945年3月の空襲で大きな被害を受けたが、1950年から1957年にかけて旧状に復する形で再建され、今日に至っている。
建築的特徴
平面は、身廊の東西両端に内陣を備える二重内陣のバシリカで、両端それぞれに三分割された翼廊が交わり、交差部の上に方形の塔が、そのわきに円筒形の階段塔が立つ。左右対称に塔が林立する重厚な外観は、オットー式建築に特徴的な構成である。内部では、身廊を支える柱列に円柱二本と角柱(ピア)一本を交互に並べる交替支柱が用いられ、各ベイ(梁間)に明快なリズムをあたえている。とりわけ重要なのが、正方形の交差部を基準寸法とし、身廊の各区画や全体の長さをその整数倍で律する数的な比例計画であり、無装飾の白い壁面と相まって、静謐で秩序だった空間を生んでいる。天井には、13世紀に描かれた板絵「エッサイの樹」(キリストの系譜を一本の樹木に擬したもの)が広がる。
意義・現在
聖ミカエル教会は、東西に内陣をもつ対称的な平面、交替支柱のリズム、そして交差部を単位とする整然たる比例によって、初期ロマネスク建築の理念を凝縮した記念碑である。ベルンヴァルトが鋳造させた青銅の扉と記念柱(現在は近隣のヒルデスハイム大聖堂に移設)とともに、オットー朝の美術・建築が達した高みを今に伝える。第二次世界大戦の惨禍を経てなお往時の姿をとどめ、ヒルデスハイム大聖堂と並ぶ世界遺産として、中世ドイツ建築を学ぶうえで欠かせない作例であり続けている。