パッサウ大聖堂 St. Stephen's Cathedral, Passau
ドイツ南東部、バイエルン州パッサウの大聖堂。1662年の大火後、カルロ・ルラーゴの設計で1668年から1693年にかけて再建された、アルプス以北を代表するイタリア風バロック教会である。世界最大級のパイプオルガンでも知られる。
§1 — 概要概要
ドイツ南東部、バイエルン州の都市パッサウに建つカトリックの大聖堂で、パッサウ司教座聖堂である。聖シュテファン(聖ステファノ)に捧げられ、ドイツ語では Dom St. Stephan と呼ばれる。全長およそ100メートルに及ぶ堂内は、アルプス以北で最大のバロック教会内部とされ、イタリア・バロックの影響を最も色濃く伝える作例として名高い。設計の総括はイタリア出身の建築家カルロ・ルラーゴが担った。
歴史
この場所には8世紀以来いくつもの聖堂が建て継がれてきた。1662年、市街を襲った大火が前身の後期ゴシック聖堂をほぼ焼失させ、東側の内陣部分のみが焼け残った。司教ヴェンツェスラウス・フォン・トゥーンのもとで再建が決定され、1668年から1693年にかけて、残存するゴシックの東部と接合する形でバロックの新堂が築かれた。全体計画をルラーゴが立て、内部のスタッコ装飾をジョヴァンニ・バッティスタ・カルローネが、天井のフレスコ画をカルポフォロ・テンカラが手がけた。イタリア人芸術家たちの協働により、ドナウ川流域のバロック装飾の規範となる空間が生み出された。
建築的特徴
平面は伝統的な身廊と側廊からなる長堂形式をとり、交差部にはドームが架かる。白と金を基調とする内部は、豊かなスタッコ装飾と大画面のフレスコで埋め尽くされ、高さと奥行きを強調する劇的な演出が貫かれている。ヴォールト天井に展開する天井画は聖シュテファンの生涯などを主題とし、装飾と絵画が一体となって天上的な幻影を立ち上げる。焼け残ったゴシックの内陣と、新造のバロック身廊が一続きの空間に統合されている点も、この聖堂の来歴を物語る特徴である。
意義・現在
パッサウ大聖堂は、ドイツにおけるイタリア・バロックの到達点の一つとして建築史に位置づけられる。その内部装飾は数十年にわたり南ドイツ・オーストリアのバロック教会の手本となった。今日では世界最大級の大聖堂パイプオルガンを擁することでも広く知られ、1万7千本を超えるパイプを備えるこの楽器による演奏会は街の名物となっている。現役の司教座聖堂として礼拝に用いられるとともに、パッサウ旧市街を代表する観光・文化の中心であり続けている。