ブザンソンのシナゴーグ Synagogue of Besançon
フランス東部ブザンソンのユダヤ教礼拝堂。建築家ピエール・マルノットの設計により1869年に献堂された、コルドバやアルハンブラに範を求めたイスパノ=ムーア様式の作で、フランスでは稀な新ムーア様式のシナゴーグとして知られる。
§1 — 概要概要
ブザンソンのシナゴーグは、フランス東部ドゥー県の県都ブザンソン、ドゥー川に臨むバタン地区に建つユダヤ教の礼拝堂である。コルドバのメスキータやグラナダのアルハンブラに着想を得たイスパノ=ムーア(新ムーア)様式により、19世紀フランスでは類例の少ない東方趣味の礼拝堂として知られる。設計は地元フランシュ=コンテの建築家ピエール・マルノットによる。
歴史
19世紀半ば、ブザンソンのユダヤ人共同体は急速に増加し、旧来の礼拝所では手狭となった。共同体は新会堂の設計を、かつて旧シナゴーグの内装も手がけたマルノットに委ねた。当初の案は経済性を理由に県の建築委員会から難色を示されたが、規模を整えた「ムーア様式の記念建築」として認められ、1867年に最初の石が据えられた。工事は1869年から1871年にかけて進められ、落成式は1869年11月18日に行われている。資金は共同体の募金と借入によってまかなわれ、ヴェイユ=ピカール家ら篤志家の寄進が大きく寄与した。第二次世界大戦中、ドイツ占領下で深刻な脅威にさらされたが、用途・建築ともに大きな改変を受けずに残った。
建築的特徴
小ぶりな石造の建物で、赤みを帯びた石材を交互に積んだ二基の小塔(ミナレットを思わせる塔)を備えた東方風の正面をもつ。屋根には亜鉛葺きのドームが架かり、中軸に沿って並ぶ採光用の小ドームが内部を照らす。窓やフリーズには幾何学的なアラベスク風の装飾がほどこされ、外観はモスクを思わせるが、ヘブライ語で記された十戒の銘板やステンドグラスのダビデの星が、これがユダヤ教の会堂であることを明示する。装飾の典拠としては、オーウェン・ジョーンズによるアルハンブラやカイロの図版が指摘されている。
意義・現在
本会堂は、フランス、ひいてはヨーロッパでも数少ない新ムーア様式のシナゴーグとされる。19世紀のユダヤ人解放期に各地で建てられた会堂が新古典主義をまとうことの多かったなかで、明確に東方の意匠を選んだ点で際立つ。マルノットの作はのちのヴズールのシナゴーグにも影響を与えた。1984年に歴史的記念物(モニュマン・イストリック)に指定され、現在もブザンソンのユダヤ人共同体の主たる礼拝の場として用いられている。