トレド大聖堂 Toledo Cathedral
スペイン中部トレドに建つ、スペイン首座大司教座の大聖堂。1226年に着工した盛期ゴシックの傑作で、五廊式の平面とブルージュ大聖堂に倣う構成に、後世のムデハル・プラテレスコ・バロックの装飾が重なる。
§1 — 概要概要
トレド大聖堂(正式には聖母マリア被昇天首座大聖堂、Catedral Primada de Santa María de Toledo)は、スペイン中部、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の古都トレドに建つカトリックの大聖堂である。トレド大司教座が置かれ、1088年に教皇ウルバヌス2世からイベリア半島の首座(プリマス)の称号を授けられて以来、スペイン・カトリックの中心であり続けてきた。13世紀の盛期ゴシックを代表する大聖堂であり、スペイン・ゴシックの最高傑作の一つに数えられる。
歴史
建設は1226年、カスティーリャ王フェルナンド3世の治世に始まった。建つ場所には、かつてイスラーム時代の大モスクがあり、さらにその下には西ゴート時代の聖堂が眠るとされる。設計はフランスのゴシック建築、とりわけブルージュ大聖堂に範をとった。初期の棟梁マエストロ・マルティンに続き、ペトルス・ペトリ(ペドロ・ペレス、1291年没)が内陣と周歩廊を中心に工事を進めた。建設は長期にわたり、身廊の最後のゴシック様式の交差ヴォールトが完成したのは、カトリック両王の時代にあたる1493年のことである。
建築的特徴
平面は五廊式で、これはかつての大モスクの敷地を踏襲した結果とされる。中央の身廊を二重の側廊が取り巻き、内陣の周囲を周歩廊がめぐる構成は、フランス大聖堂の影響を示す。外部はフライング・バットレスが高い壁を支え、内部は尖頭アーチとリブ・ヴォールト、トレーサリーの窓が垂直の上昇感を生む。一方でトリフォリウムの意匠などには、スペイン特有のムデハル様式の影響も見られる。後世には、プラテレスコ様式の装飾や、ナルシソ・トメによるバロックの天窓「エル・トランスパレンテ」が加えられ、複数の時代の様式が一つの空間に重なり合っている。
意義・現在
トレド大聖堂は、フランス・ゴシックの体系をスペインの風土と歴史のなかで受け止め、独自の重層的な空間へと昇華させた建築である。主祭壇の壮麗な衝立(レターブロ)、聖歌隊席の彫刻、聖具室の宝物など、内部に蓄えられた美術の質も高い。1986年にはトレド旧市街全体がユネスコの世界文化遺産に登録され、本大聖堂はその歴史的景観の中核をなす記念物として、今日も司教座の機能を保ちながら多くの巡礼者と訪問者を迎えている。