ウールワース・ビルディング Woolworth Building
ニューヨークの初期摩天楼。実業家ウールワースの社屋として1913年に開業し、1929年まで世界一の高さを誇った。ネオ・ゴシックの装いから「商業の大聖堂」と呼ばれる。設計はキャス・ギルバート。
§1 — 概要概要
ウールワース・ビルディングは、ニューヨーク市マンハッタン南部、ブロードウェイ233番地に建つ初期の摩天楼である。安価な雑貨店チェーンで財を成した実業家フランク・ウールワースの社屋として、建築家キャス・ギルバートが設計した。高さ241メートルに及び、ネオ・ゴシックの装飾をまとう姿から「商業の大聖堂」と称される。
歴史
工事は1910年11月に着工し、躯体は1912年に完成、1913年4月に開業した。ウールワースは多額の建設費を現金で支払ったと伝えられる。開業を祝う夜には、ワシントンにいた大統領ウッドロウ・ウィルソンがボタンを押し、全館の照明を一斉に灯したという。完成と同時に世界一高い建築物となり、1929年から1930年にかけてクライスラー・ビルらに抜かれるまで、その座を保った。30層の基壇部の上に30層の塔屋を載せる構成で、57階には展望室が設けられていた。上層階は後に住居へ転用され、現在は集合住宅として用いられている。
建築的特徴
構造は当時最新の鉄骨フレームで、外装はテラコッタと石灰岩で覆われる。尖頭アーチや小尖塔、頂部の塔屋といったゴシックの語彙を高層建築に翻案し、鉄骨の合理性を中世大聖堂の垂直性で覆い隠した点に特色がある。ロビーはモザイクの天井とゴシック風の交差ヴォールトで飾られ、硬貨を数える施主や建物の模型を抱える建築家を戯画化した持送り彫刻が、柱頭付近に隠されている。
意義・現在
摩天楼が単に高いだけでなく芸術的にも洗練されうることを示し、歴史主義の装いをまとった高層建築の一つの規範となった。「商業の大聖堂」の異名は、その壮麗さを大聖堂になぞらえた当時の評にちなむ。1966年にアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定され、ニューヨークの初期スカイラインを象徴する建築として、今も街区に屹立している。