ボザール様式
ボザール様式(Beaux-Arts)は、19世紀のパリの国立高等美術学校(エコール・デ・ボザール)で確立された建築教育とその様式を指す。古代ローマやイタリア・ルネサンス、フランス・バロックの古典的語彙を統合し、左右対称の明快な平面構成と豊かな装飾、軸線に沿った儀礼的な動線を重んじる点に特徴がある。ポルティコやオーダーといった古典的な要素、ロタンダや大階段などの儀礼的な空間を活用し、内部から外部へと一貫した軸線で秩序づけられている。この様式はエコール・デ・ボザールで学んだ建築家たちを通じてアメリカに広がり、19世紀末から20世紀初頭にかけて駅舎や図書館、美術館、裁判所、大学といった威厳が求められる建物に広く採用されるようになった。ニューヨークのグランド・セントラル駅やボストン美術館本館がその代表例で、新古典主義に連なる歴史主義の一翼をなしながらも、単一の様式を厳格に再現するのではなく複数の古典的伝統を統合する独自性を持っていた。教育面では、アトリエ(画室)を単位とした徒弟的な指導と、限られた時間で構想をまとめるエスキスの訓練、ローマ賞をめぐる競争が設計能力を鍛え、平面計画を重視する方法論が体系化された。こうした手法は近代以降の建築教育にも引き継がれている。やがてモダニズムの台頭とともに様式としては衰退したが、都市の記念碑的な公共空間を形づくった様式として大きな影響を残している。