ウィーン旧市街、ホーフブルクに隣接する宮殿美術館。アウグスティーナー稜堡の上に築かれ、世界有数の版画素描コレクションを収める。アルベルト公が18世紀後半に始めた収集に由来する。
§1 — 概要概要
アルベルティーナ(Albertina)は、オーストリアの首都ウィーン旧市街に立つ宮殿美術館である。ホーフブルク(王宮)の南端、市の旧防御施設であったアウグスティーナー稜堡の上に築かれ、約65,000点の素描と約100万点の版画を擁する世界有数の版画素描コレクションで知られる。近年は印象派と20世紀初頭の絵画も常設展示する。
歴史
建物の起源は17世紀後半の宮廷造営局(Hofbauamt)の庁舎にさかのぼる。1744年、造営局長官エマヌエル・シルヴァ=タロウカがこれを自邸へと改修し、パレ・タロウカと呼ばれた。のちにザクセン=テッシェン公アルベルトの居城となり、公はブリュッセルから持ち帰った版画コレクションをここに移すとともに、ルイ・モントワイエに命じて建物を大きく増改築させた。収集そのものは1776年、ジェノヴァ伯ドゥラッツォがアルベルト夫妻に約1,000点の作品を贈ったことに始まる。1820年代にはヨーゼフ・コルンホイゼルが内部を改装した。1919年に収集と建物は国家に接収され、1921年に「アルベルティーナ」と改称された。
建築的特徴
稜堡という人工の高台の上に立つため、テラスからの眺望と、街路から見上げる堂々たる量塊感が際立つ。現在の外観はモントワイエによる古典主義的な改築が基調をなし、簡潔な壁面と整然とした開口部が落ち着いた品格を与えている。内部にはコルンホイゼルらが手がけた華やかな帝政様式の広間が残り、版画素描を守るための採光と空調にも配慮が重ねられてきた。
意義・現在
アルベルティーナは、ハプスブルク家の収集文化が公共の美術館へと転じた歴史を体現する場である。デューラーの《野兎》をはじめとする名品を擁し、版画素描研究の世界的拠点であり続ける。2003年の大規模改修を経て常設・企画展の双方で多くの来館者を集め、ウィーン歴史地区の一角を占める文化的中核となっている。