アントウェルペン市庁舎 Antwerp City Hall
ベルギー・アントウェルペンの中央広場に面して立つ市庁舎。コルネリス・フロリス2世らの設計で1561年から1565年にかけて建てられた、北ヨーロッパで最も早いルネサンス建築の一つである。
§1 — 概要概要
アントウェルペン市庁舎(Stadhuis van Antwerpen)は、ベルギーのアントウェルペン、中央広場フローテ・マルクトに面して立つ市庁舎である。コルネリス・フロリス・デ・フリーントらの設計により、1561年から1565年にかけて建てられた、北ヨーロッパで最も早いルネサンス建築の一つである。イタリア・ルネサンスとフランドルの伝統を融合させたその様式は、後の北方ルネサンス建築の手本となった。
歴史
16世紀のアントウェルペンは、ヨーロッパ随一の貿易港として黄金時代を迎えていた。手狭となった中世の市庁舎に代えて、繁栄にふさわしい新たな庁舎が求められた。当初はゴシック様式で計画されたが、資金を待つうちに流行が移り、1560年、フロリスを中心とする一団によってルネサンス様式の設計がまとめられた。1561年に着工し、1565年に開庁する。だが完成からほどなく、1576年の「スペインの激怒」――給与を払われず暴徒化したスペイン兵によるアントウェルペン略奪――で焼かれ、外壁を残して内部を失った。市民は三年のうちにこれを再建した。今日見られる豪奢な内部の多くは、19世紀の改修によるものである。
建築的特徴
正面は四層からなる。下層はルスティカを施したアーチ状の柱廊で、かつては小さな店が並んだ。その上にドーリア式とイオニア式の列柱が層を重ねて並び、大きな方立窓を区切る。最上層は開廊(ロッジア)をなす。中央には、軒を越えて段状にせり上がる豪奢な装飾部が立ち、正義・思慮・聖母の女性像と、ブラバント公・スペイン・ハプスブルク家・アントウェルペン辺境伯の紋章を掲げる。イタリアの宮殿に範をとりつつフランドルの意匠を織り込んだこの構成は、フロリスの名にちなんで「フロリス様式」とも呼ばれた。
意義・現在
アントウェルペン市庁舎は、ルネサンスがアルプスの北へ伝わる過程を示す画期的な建物である。古典のオーダーと豊かな装飾を結びつけたその姿は、オランダやドイツの市庁舎に影響を与え、北方ルネサンスの規範となった。建物は「ベルギーとフランスの鐘楼群」の一部として世界遺産に登録されており、その一覧のなかで、今も本来の市庁舎として使われ続けている唯一の建物である。近年の修復を経て、商業都市アントウェルペンの黄金時代を伝える象徴として、その威容を保っている。