バヤズィト2世モスク(Beyazıt Camii)は、イスタンブールのバヤズィト広場に立つ16世紀初頭のモスクである。スルタン・バヤズィト2世が発願し、1500年から1505年にかけて建てられた、初期から古典期へと移行するオスマン建築の重要な作例である。
§1 — 概要概要
バヤズィト2世モスク(Beyazıt Camii)は、イスタンブール旧市街のバヤズィト広場に立つモスクである。オスマン帝国のスルタン、バヤズィト2世(Bayezid II)が発願し、1500年から1505年にかけて建てられた帝室モスクで、周囲の施設を含む複合体は1506年までに整えられた。征服後のイスタンブールに建てられた最初期の大規模な帝室モスクのひとつであり、初期オスマン建築から古典期へと向かう過渡を示す作例として、建築史上きわめて重要な位置を占める。建つ場所は、古代のテオドシウスの広場(フォルム)の跡にあたる。
歴史
建設は1500年に始まり、1505年に主要部が完成した。設計者については確実な記録がなく、古くから建築家ミマール・ハイレッディン(Mimar Hayreddin)の名が伝えられてきたが、その帰属は確実ではない。近年の研究では、実際の造営を担ったのはヤクブシャー・イブン・イスラムシャーであるとする説も有力で、設計者を一人に断定することは難しい。1509年、イスタンブールを襲った大地震でドームが損傷したが、のちに16世紀後半、巨匠ミマール・スィナン(Mimar Sinan)の手で修復されたと伝えられる。発願者バヤズィト2世の墓廟も、モスクの背後の庭に設けられている。
建築的特徴
本モスクは、中央の大ドームと、その前後に連なる二つの半ドームによって主たる祈りの空間を覆う。さらに左右には小さなドームが連なり、全体として中央から外へと段階的に下る「ドームの滝」のような構成を示す。中央ドームの直径は約17メートル、頂部までの高さは約44メートルに達し、ほぼ正方形の平面の上に均整のとれた量塊が積み上がる。この形式は、半世紀後にスィナンが大成する古典オスマン建築のドーム構成を先取りするものであり、ハギア・ソフィアに学んだ空間操作の発展段階を示している。モスクには学院や施療院、キャラバンサライ、浴場などを備えたキュッリイェが付属し、入口まわりにはムカルナスの装飾が見られる。
意義・現在
バヤズィト2世モスクは、イスタンブールに現存する帝室複合施設のなかで、ほぼ創建時の姿をとどめる最古のもののひとつである。スィナンによって完成される古典オスマン建築の、いわば前夜を示す建築として、その歴史的価値は高い。今日も現役のモスクとして用いられ、隣接するイスタンブール大学やグランド・バザールにほど近い旧市街の中心で、多くの人々が行き交う場の核となっている。広場に面したその堂々たる姿は、首都イスタンブールの帝室建築の出発点を今に伝えている。