ボディアム城 Bodiam Castle
イングランド南東部、イースト・サセックスの水堀に囲まれた中世の城。1385年、フランス軍の襲来に備えてサー・エドワード・ダリングリッジが築いた方形プランの城郭で、四隅と各辺に塔を備える。内部は廃墟ながら、水面に映る外観の保存状態の良さで知られる。
§1 — 概要概要
ボディアム城(Bodiam Castle)は、イングランド南東部イースト・サセックス、ロザー川沿いの低地に築かれた中世の城郭である。方形の敷地を幅広い水堀がぐるりと囲み、城門と塔が水面に映る姿は、中世の城のイメージそのものとして広く親しまれている。現在はナショナル・トラストが管理し、年間を通じて公開されている。
歴史
1385年、騎士サー・エドワード・ダリングリッジ(Sir Edward Dalyngrigge)が、国王リチャード2世から城を防備する許可(license to crenellate)を得て築いた。百年戦争のさなか、フランス艦隊によるイングランド南岸への襲撃が現実の脅威であった時期で、城は内陸への侵入を防ぐ拠点として構想された。築城は数年のうちに進み、1388年ごろには主要部が整ったとみられる。17世紀のイングランド内戦では軍事的価値を失い、内部の居館は破却(slighting)されて屋根を失った。
建築的特徴
ボディアムは、中庭を囲んで居室を配する「方形城郭(quadrangular castle)」の典型である。四隅に円塔、各辺の中央に方塔を立て、北辺には二重の塔を備えた堂々たる城門(ゲートハウス)を開く。城門には落とし格子(ポートカリス)と、頭上から攻撃するためのマチコレーション(石落とし)が設けられ、上部には銃眼付きの胸壁がめぐる。一方で窓は比較的大きく、内部には礼拝堂や複数の居室が整えられており、純粋な要塞というより、防御の体裁を備えた格式ある邸宅としての性格も強い。城を囲む水堀も、単なる防御施設にとどまらず、建物を水面に浮かべて見せる演出的な意図が指摘されている。
意義・現在
内戦後の破却により内部は屋根を失った外殻のみを残すが、外周の塔・城壁・城門はほぼ完全な姿をとどめる。19世紀以降、ロマン主義的な「絵になる城」として評価が高まり、20世紀初頭にはカーゾン卿が修復・保存に尽力した。現在はナショナル・トラストの所有で、堀に映る対称的な姿は、中世城郭の象徴的なイメージとして親しまれている。