ブリュッセル市庁舎 Brussels Town Hall
ブリュッセルのグラン・プラスに建つ市庁舎。1401–1455年に段階的に築かれたブラバント・ゴシックの傑作で、高さ96メートルの透かし彫りの尖塔を戴く、広場で唯一現存する中世建築である。
§1 — 概要概要
ブリュッセル市庁舎(フランス語 Hôtel de Ville、オランダ語 Stadhuis)は、ブリュッセルの中央広場グラン・プラスの南側に建つ、ブリュッセル市の庁舎である。1401年から1455年にかけて段階的に建てられ、世俗のゴシック建築、とりわけブラバント・ゴシックの傑作として名高い。1695年の砲撃で周囲が壊滅したのち再建された広場のなかで、唯一現存する中世建築である。
歴史
最も古いのは正面左手の東翼で、短い塔とともに1401年から1421年に建てられた。設計者はヤコブ・ファン・ティエネンと考えられ、ジャン・ボルノワが協働した。当初は拡張を予定していなかったが、手工業ギルドが市政に参画して評議の空間が手狭になると、1444年に若きシャルル突進公が礎石を据え、より長い右翼が増築された。中央には、ブルゴーニュ公に仕えたヤン・ファン・ライスブルックの手で、1449年から1455年に高さ96メートルの後期ゴシックの尖塔が築かれ、その頂には竜を退治する聖ミカエル像が据えられた。
1695年、ルイ14世のフランス軍によるブリュッセル砲撃で建物の内部は焼け落ちたが、ファサードと塔は残った。18世紀初頭にはコルネリス・ファン・ネルヴェンらが、中庭を囲む古典主義的な背面翼を加えた。さらに19世紀末、市建築家ヴィクトル・ジャマールが大規模なネオゴシック修復を主導し、空いていた壁龕に約290体の彫像を補って、現在見られる彫刻的な外観を整えた。
建築的特徴
正面は左右非対称で、増築を重ねた来歴をそのまま映している。壁面は尖頭アーチと垂直の線で構成され、聖人・貴族・寓意像を収める無数の天蓋付き壁龕と、緻密なトレーサリーが全面を覆う。ファサードは構造から半ば独立した「装飾のスクリーン」として扱われ、ブラバント・ゴシックに特有の濃密な彫刻性が際立つ。中央の塔は、屋根の高さを越えると八角形のランタンへと優美に絞り込まれ、透かし彫りの尖塔となって屹立する。その壮麗さは、当時名高かったブルッヘの鐘楼を凌ぐことを期したものと伝えられる。
意義・現在
市庁舎は、教会堂に比肩する規模と装飾を世俗建築が獲得した、中世都市の自治と富の記念碑である。中庭の中心には、ブリュッセルからの距離を測る起点(キロメートル・ゼロ)が刻まれている。1998年、グラン・プラスの一部としてユネスコ世界遺産に登録された。現在も市庁舎として使われ、広場の象徴であり続けている。