モナコ大聖堂 Cathedral of Our Lady Immaculate
モナコ岩山の旧市街に立つ大司教座聖堂。シャルル・ルノルマンの設計で1875年に着工し、ラ・チュルビ産の白石によるロマネスク=ビザンティン様式で1903年に竣工した。グリマルディ家の墓所として知られる。
§1 — 概要概要
モナコ大聖堂(正式名称はノートルダム・イマキュレ大聖堂、Cathedral of Our Lady Immaculate/仏 Cathédrale Notre-Dame-Immaculée)は、地中海に突き出した岩山「ル・ロシェ」の旧市街モナコ・ヴィルに立つ、モナコ大司教区の大聖堂である。先行して同じ場所にあった聖ニコラ教会にちなみ、「サン・ニコラ大聖堂」とも通称される。無原罪の聖母に捧げられ、グリマルディ家歴代の君主と妃が葬られる国家的な聖堂として、小国の信仰と歴史の中心に位置づけられている。
歴史
この地には1252年に創建された聖ニコラ教区教会が長く立っていたが、人口の増加に対して手狭となり、シャルル3世公の命によって1874年に取り壊された。翌1875年1月6日、その跡地に現在の大聖堂の礎石が据えられる。設計を担ったのはパリの建築家シャルル・ルノルマンで、マルセイユのノートルダム・ド・ラ・ギャルド聖堂の仕事でも知られた人物である。資金難や君主の交代によって工事は長期に及び、本体の完成は1903年11月、献堂式は1911年6月11日であった。1956年にはレーニエ3世公と女優グレース・ケリーの婚礼がこの聖堂で執り行われ、世界に中継された。
建築的特徴
近郊ラ・チュルビ産の白い石灰岩を用いた、ロマネスク=ビザンティン様式の建築である。半円アーチを多用した重厚なファサードと、内部のモザイク装飾、彩色されたステンドグラスが、初期キリスト教バシリカを想起させる荘重な空間をかたちづくる。平面は三廊式のラテン十字をとり、内陣の主祭壇と司教座は白いカラーラ大理石で刻まれている。右翼廊には1500年頃にルイ・ブレアが手がけた祭壇画が伝わり、ファサードの彫刻はアンリ=ルイ・コルディエによる。雨に濡れると白さを増すというラ・チュルビ石の性質も、海を背にした聖堂の外観を際立たせている。
意義・現在
モナコ大聖堂は、十九世紀末の歴史主義が選び取った「様式の選択」の一例であり、ロマネスクへの回帰によって小国の歴史的連続性を表象しようとした建築である。レーニエ3世とグレース・ケリーの墓所として多くの参詣者を集め、今日もモナコ大司教区の祭儀の中心として機能している。岩山の上にそびえる白い姿は、カジノに彩られた現代モナコのもう一つの顔として、公国の精神的な核を象徴している。