チリ国立美術館 Chilean National Museum of Fine Arts
サンティアゴの森林公園に建つ、ラテンアメリカ最古の美術館。1910年の独立百周年を記念して、エミール・ジェキエがパリのプティ・パレに範をとり、ボザール様式で設計した宮殿建築である。
§1 — 概要概要
チリ国立美術館(Museo Nacional de Bellas Artes)は、チリの首都サンティアゴの森林公園(パルケ・フォレスタル)に建つ美術館である。1880年に創設された、ラテンアメリカで最も古い美術館として知られる。現在の建物は「美術宮殿(パラシオ・デ・ベジャス・アルテス)」と呼ばれ、チリ美術の中心的な収集・展示の場となっている。
歴史
美術館そのものは1880年に国立絵画館として発足したが、独自の建物を持たず各地を転々とした。1901年、政府が美術館と美術学校のための建物を新築する方針を定め、設計者にエミール・ジェキエが選ばれる。建設は独立百周年の記念事業として進められ、1910年に万国博覧会の催しの一環として開館した。中央ホールを覆うガラスの円蓋はベルギーで製作され、1907年にチリへ運ばれている。1960年のチリ地震で被災したのち耐震補強が施され、2010年の大地震では被害は外装の一部にとどまった。
建築的特徴
全体は、パリのプティ・パレに範をとった左右対称のボザール様式(学院派)の宮殿建築である。新古典主義と第二帝政様式、バロックの復興的な要素を併せもち、そこに鉄とガラス、アール・ヌーヴォーの繊細な細部が加わる。中央の入口は、ボッロミーニがパラッツォ・バルベリーニで用いた遠近法的な窓辺の意匠を巨大化したもので、ガラスに囲まれたペディメント付きの扉を据える。内部は、入口から大階段へと貫く中心軸に沿って構成され、大ホールの上方には、アントニオ・コル・イ・ピによって彫られたカリアティードが見られる。
意義・現在
学院派の規範をラテンアメリカに移植した記念碑であり、フランスで学んだジェキエの設計を通じて、世紀転換期のチリが掲げた共和国としての文化的な野心を体現している。ガラスの円蓋から降る光のもと、植民地期から現代に至るチリ美術と、スペイン・フランドル・イタリアなどの絵画を収める。1976年にはチリの国定史跡に指定された。建物の背後には現代美術館とチリ大学の旧美術学校も併設され、サンティアゴの芸術の拠点をなしている。