パリ北駅 Gare de Paris-Nord
ヨーロッパ最多の乗降客を擁するパリの主要ターミナル。J・I・イトルフの設計で1861–65年に建てられ、凱旋門を範とする石造ファサードと、鋳鉄の列車庫が結びついた第二帝政期の鉄道建築である。
§1 — 概要概要
パリ北駅(Gare du Nord、正式にはParis-Nord)は、パリ10区に立つ主要鉄道ターミナルで、ヨーロッパで最も乗降客の多い駅とされる。現在の駅舎は、建築家ジャック・イニャス・イトルフの設計により1861年から1865年にかけて建てられた。古代ローマの凱旋門を範とする壮麗な石造ファサードと、鉄とガラスによる広大な列車庫を結びつけた、第二帝政期の鉄道建築を代表する作品である。
歴史
初代の北駅は1846年、レオンス・レイノーの設計で開業したが、急増する鉄道需要にすぐに手狭となった。1860年に旧駅は部分的に解体され、そのファサードはリール(現リール・フランドル駅)へ移築された。北部鉄道会社の会長ジェームズ・ド・ロチルドはイトルフを起用し、1861年5月に現駅の建設が始まった。駅は1864年に建設途上のまま供用を開始し、1865年12月に完成している。1889年と1900年前後にはホームが増設され、増大する交通を支えた。
建築的特徴
ファサードは中央に凱旋門の構図を据え、頂部にはパリを表す彫像、その左右に会社が結んだ23の都市を擬人化した彫刻を配する。背後の列車庫では、グラスゴーの鋳造所で造られた鋳鉄の柱と梁が大スパンの上屋を支え、外光を採り入れる。重厚な石造の前面と、軽快な鉄骨の内部空間との対照が、19世紀の鉄道建築の二面性を端的に示している。
意義・現在
パリ北駅は、鉄道が都市の表玄関となった時代に、駅という新しい建築類型へ記念碑的な威厳を与えた先駆例である。石造ファサードに記念碑性を、鉄骨ホールに機能性を担わせる構成は、以後ヨーロッパ各地で建てられた大型ターミナル建築にも影響を及ぼした。ファサードとホールは1975年にフランス歴史的記念物(monument historique)に登録された。今日ではユーロスターやTGVの発着する国際的な結節点として機能し、慢性的な混雑を背景に大規模な改修が進められている。