グランド・セントラル駅 Grand Central Terminal
ニューヨーク、ミッドタウンの鉄道ターミナル。1913年完成のボザール様式の傑作で、二層に重ねた線路と壮麗な大コンコースにより、駅を都市の広間へと高めた。
§1 — 概要概要
グランド・セントラル駅(Grand Central Terminal)は、ニューヨーク・マンハッタンの42丁目とパーク街が交わる地に建つ鉄道ターミナルである。1913年に完成し、ボザール様式の記念碑的な建築として、また鉄道工学の先駆的達成として知られる。現在はメトロノース鉄道の終着駅であり、世界で最も多くの人が訪れる建築物のひとつに数えられる。天井に星座を描いた大コンコースは、待ち合わせの場として、また数多くの映画の舞台として親しまれてきた。
歴史
前身は、鉄道王コーネリアス・ヴァンダービルトが1871年に開いたグランド・セントラル駅であった。蒸気機関車の煤煙と地上を走る線路は都市の障害となり、1902年のトンネル内衝突事故を機に、線路の地下化と電化が決定的となる。新駅の設計競技では、事務所リード・アンド・ステムが、線路を二層に重ね、駅を囲む高架の車路で囲む合理的な全体計画を提案して採用された。意匠はウォーレン・アンド・ウェットモアが加わって練り上げられ、両事務所はときに対立しながらも壮麗なボザール建築をまとめ上げた。1903年に着工し、旧駅を使いながらの難工事を経て、1913年2月に開業した。
建築的特徴
最大の見どころは、長さ約120メートルの大コンコースである。高いヴォールト天井には金色の星座が描かれ、半円アーチの高窓から光が差し込む。床はテネシー産の大理石、装飾には石灰岩とカーン石が用いられ、随所に鷲やどんぐりといったヴァンダービルト家ゆかりの意匠が刻まれている。42丁目側の正面には、彫刻家ジュール・クータンによる神話群像が掲げられ、その中心に大時計を抱く。建築的な達成にも増して画期的だったのは、その断面構成である。電化によって線路を完全に地下化し、長距離列車と近郊列車を上下二層に分離した。線路の上に生じた地表を不動産として開発する「空中権」の手法は、パーク街沿いの街区を一変させた。駅は単なる通過点ではなく、都市を載せる基盤となったのである。
意義・現在
20世紀後半、鉄道の衰退とともに駅は荒廃し、1960年代には超高層ビルへの建て替え計画が持ち上がった。これに対し、ジャクリーン・ケネディ・オナシスらを中心とする保存運動が起こり、1978年に合衆国最高裁が駅のランドマーク指定を支持したことで取り壊しを免れた。この判決は、アメリカの歴史的建造物保存制度の礎となった。1990年代の大規模修復で大コンコースの星空天井もよみがえり、駅は商業と文化の場として再生した。合衆国国定歴史建造物に指定され、いまも一日に数十万の人々を迎え入れている。