ラホール博物館 Lahore Museum
パキスタン・ラホールにある同国最大の博物館。1865年に創立され、1894年にモール大通りの現建物へ移った。バイ・ラーム・シングとロックウッド・キプリングが設計したインド・サラセン様式の代表作で、ガンダーラ仏教美術の名品で知られる。
§1 — 概要概要
ラホール博物館(Lahore Museum、ウルドゥー語で「アジャーイブ・ガル=驚異の館」)は、パキスタン・パンジャーブ州のラホール、モール大通り(ザ・モール)に建つ同国最大の博物館である。インダス文明からガンダーラ、ムガル、シク、英領期に至る南アジアの広範なコレクションを収め、なかでもインド・グレコおよびガンダーラの仏教美術で名高い。建物前のザムザマ砲とともに、ラドヤード・キプリングの小説『キム』の冒頭の舞台として知られ、その父ジョン・ロックウッド・キプリングは当館初期の学芸員であった。
歴史
博物館は1865年、パンジャーブの工芸を振興する機関として、1864年のパンジャーブ博覧会のために建てられた仮設館(現トリントン・マーケットの地)に創立された。1887年、ヴィクトリア女王即位50年記念事業の一環として恒久的な建物の建設が決まり、公募で集めた資金をもとに工事が進められ、1894年に現在地で開館した。設計はメイヨー美術学校の校長ジョン・ロックウッド・キプリングと、その教え子バイ・ラーム・シングによる。建設は当時ラホールの執行技師であったガンガー・ラームが統括した。
建築的特徴
建物はインド・サラセン様式の代表作で、ムガル・インド・イスラムの意匠とヨーロッパの構成を接合する。中央の張り出しを東西の展示室翼が挟む左右対称の平面をとり、北面のモール大通りに正面を向ける。赤煉瓦のファサードに対し、入口の白大理石のポーチが鮮やかな対比をなす。三連アーチを精緻に彫った大理石の柱が支えるこのポーチは、シャー・ジャハーン期のディーワーネ・ハースを思わせる幾何学・花文の浮彫で飾られ、矩形の枠が縁取るピシュタークとして正面を荘厳する。奥の前室の天井には、イスラムの伝統文様による木彫が施されている。
意義・現在
ラホール博物館は、植民地期に現地の工芸と西洋の建築技術を統合しようとしたインド・サラセン運動の到達点の一つである。設計を主導したバイ・ラーム・シングはこの様式を代表するインド人建築家であり、当館はラホールのモール大通りに連なる同様式の公共建築群の中核をなす。今日もパキスタン最大の博物館として約6万点の収蔵品を擁し、ガンダーラの「断食する仏陀」像などを目当てに多くの来館者を集めている。