マリア・ラーハ修道院 Maria Laach Abbey
ドイツ・ラインラント=プファルツ州、ラーハ湖畔に建つベネディクト会修道院。1093年に創建され、六つの塔をもつ聖堂はドイツ・ロマネスク建築の代表作に数えられる。西側には列柱に囲まれた前庭「パラディース」が付属する。
§1 — 概要概要
マリア・ラーハ修道院(Maria Laach Abbey)は、ドイツ・ラインラント=プファルツ州のアイフェル地方、ラーハ湖の南西岸に建つベネディクト会の修道院である。付属する聖堂は六つの塔をもつ堂々たる姿で知られ、ドイツ・ロマネスク建築を代表する建築の一つに数えられる。「マリア」の名は1862年に加えられたもので、それ以前は単に「ラーハ修道院」と呼ばれた。
歴史
修道院は1093年、ライン宮中伯ハインリヒ2世によって、ベルギーのアフリゲム修道院の支院として創建された。聖堂の建設はこの創建とともに始まり、おおむね1177年までに本体が完成した。西側に列柱廊が小さな中庭を囲む前庭「パラディース(楽園の意)」が加えられたのは1225年ごろで、ロマネスク建築では珍しいこの構成が修道院の象徴的な見どころとなっている。創建以来、修道院は世俗化の波などを受けて幾度も存続の危機にさらされたが、1892年にボイロン修道会のベネディクト会士が入り、翌年あらためて修道院(アベイ)の格を得て再興された。19世紀末から20世紀にかけては、荒廃していた聖堂の大規模な修復と内部装飾の整備が進められている。
建築的特徴
聖堂は三廊式のバシリカを基本とし、東西の両端にそれぞれ後陣(アプス)と塔を備える両頭式の構成をとる。交差部にそびえる方形の塔と、東西に配された円形・方形の塔が合わさって、六塔の独特の輪郭を生む。内部は半円アーチと力強い壁体に支えられ、天井には樽型ヴォールトや交差ヴォールトが架けられる。装飾は簡素だが、石積みの量塊感と均整のとれた比例が、ロマネスク建築の重厚な空間を端的に示している。
意義・現在
マリア・ラーハ修道院は、創建期の姿を比較的よく伝えるドイツ・ロマネスク建築の白眉として、国の文化財(クルトゥーア・デンクマール)に指定され保護されている。現在も現役の修道院であり、ベネディクト会士の共同体が祈りと労働の生活を営むとともに、出版や園芸などの事業を通じて地域に開かれた場であり続けている。湖畔の自然と一体となった景観は、巡礼者と訪問者の双方を惹きつけている。