メキシコシティ・メトロポリタン大聖堂 Mexico City Metropolitan Cathedral
アメリカ大陸最古・最大の大聖堂。アステカの神殿跡に1573年から約240年かけて建設され、ルネサンス・バロック・新古典の三様式が積層する。アルシニエガが設計し、マヌエル・トルサが完成させた。
§1 — 概要概要
メキシコシティ・メトロポリタン大聖堂(Catedral Metropolitana de la Ciudad de México)は、メキシコシティ中心部のソカロ(憲法広場)北側に建つ、カトリック・メキシコ大司教区の司教座聖堂である。アメリカ大陸で最も古く、最も大きい大聖堂とされる。アステカ帝国の都テノチティトランの神域、テンプロ・マヨールに隣接する跡地に、解体された神殿の石材も用いて築かれた。約240年に及ぶ建設期間のため、ルネサンス・バロック・新古典主義という三つの様式が一つの建築に積層している。
歴史
征服後まもなく建てられた仮の聖堂に代わる新聖堂として、1562年に基礎工事が始まり、1573年に本格的な建設が開始された。当初の設計は、ハエンやバリャドリードなどスペインの大聖堂に範をとったクラウディオ・デ・アルシニエガとフアン・ミゲル・デ・アグエロによる。旧テスココ湖の軟弱な地盤に対し、約二万本の木杭を打ち込んで基礎を固めた。建設は世代を超えて受け継がれ、フアン・ゴメス・デ・トラスモンテ、ホセ・エドゥアルド・デ・エレーラらが工事を率いた。18世紀末にはホセ・ダミアン・オルティス・デ・カストロが鐘塔と正面を、彼の死後はマヌエル・トルサがドームや欄干、頂部の彫像を手がけ、1813年に全体が完成した。
建築的特徴
平面はスペイン大聖堂に倣う五廊式で、両脇に多数の礼拝堂を抱える。長い建設期間を映して、外観の基本構成はルネサンス(エレーラ様式)の端正さをもちつつ、内部にはチュリゲラ様式と呼ばれるスペイン・バロックの過剰なまでの装飾が花開く。なかでもヘロニモ・デ・バルバスによる「諸王の祭壇」はその頂点である。一方、トルサが仕上げたドームや正面上部の欄干・彫像は、節度ある新古典主義の手になる。壁体には軽量な火山岩テソントレが多く用いられた。
意義・現在
メトロポリタン大聖堂は、スペインによる征服と植民地時代の信仰・権力を体現する記念碑であると同時に、三世紀にわたる新スペインの建築・美術の総合的な見本帳でもある。皇帝アグスティン1世やマクシミリアン1世の戴冠など、メキシコ史の節目の舞台ともなった。軟弱地盤による不同沈下は長く構造を脅かし、20世紀末には大規模な地盤・基礎の補強が行われた。1987年に「メキシコシティ歴史地区とソチミルコ」の一部としてユネスコ世界遺産に登録されている。