アミアン大聖堂 Notre-Dame d'Amiens
フランス北部アミアンに建つ、フランス最大の容積を誇るゴシック大聖堂。1220年に着工され約半世紀で主要部が完成し、42メートルに達する高い身廊と精緻な彫刻で盛期ゴシックの頂点を示す。世界遺産。
§1 — 概要概要
アミアン大聖堂(Cathédrale Notre-Dame d'Amiens)は、フランス北部オー=ド=フランス地域圏の都市アミアンに建つカトリックの大聖堂である。1220年に着工され、わずか半世紀ほどで主要部が完成した。容積ではフランス最大のゴシック大聖堂であり、高く澄んだ身廊と西正面の彫刻群によって、盛期ゴシックの達成を最も明快に示す建築として名高い。1981年に世界遺産へ登録された。
歴史
先行する聖堂が焼失したのち、1220年に司教の発意で再建が始まった。最初の棟梁ロベール・ド・リュザルシュが全体を構想し、身廊から工事を起こした。彼に続いてトマ・ド・コルモンと、その子ルノー・ド・コルモンが内陣など東側の建設を引き継ぎ、1270年ごろには大半が完成している。約50年という短い工期はゴシック大聖堂としては異例であり、結果として全体に類のない様式的な統一感をもたらした。
身廊から内陣へ進むなかで様式は移ろい、1236年に始まる中段以上や、1250年代に拡げられた内陣の高窓には、より軽やかなトレーサリーを用いるレヨナン様式の萌芽が現れている。西正面の二つの塔や、112メートルに及ぶ尖塔はのちの時代に整えられた。聖堂は二度の世界大戦の戦火を、土嚢で彫刻を守るなどして辛くも免れている。
建築的特徴
内部に入ってまず圧倒されるのは、約42メートルに達する身廊の高さである。これはフランスで完成したゴシックの身廊として最も高い。細い束ね柱が一気に立ち上がり、尖頭アーチとリブ・ヴォールトが荷重を受け、外へ抜ける力はフライング・バットレスによって地へ流される。壁面は大アーケード・トリフォリウム・クリアストーリーの三層に整理され、上方ほど開口が広がって光を導く。
外観では、三つの深い玄関を穿った西正面が白眉である。「アミアンの美しい神」と呼ばれるキリスト像をはじめ、13世紀前半の彫刻が扉口を埋め尽くし、当時の人々に聖書の世界を語りかけた。床には建設に携わった棟梁の名を刻む迷路が描かれ、設計者を知る手がかりともなっている。
意義・現在
アミアン大聖堂は、構造・採光・彫刻のすべてにおいてゴシックの理想を凝縮した記念碑であり、後続の大聖堂や19世紀のゴシック・リヴァイヴァルに大きな影響を残した。今日も現役の司教座聖堂として礼拝に用いられ、夏の夜には西正面に往時の極彩色を投影する催しが行われる。容積でフランス随一を誇るその内部空間は、訪れる者に中世の人々が天を仰いだ感覚を伝え続けている。