プーシキン美術館 Pushkin Museum of Fine Arts
モスクワ最大の西洋美術館。建築家ローマン・クレインの設計で1898年に着工し、1912年に開館した。古代神殿に倣うイオニア式の列柱が正面を飾る新古典主義建築である。
§1 — 概要概要
プーシキン美術館(Государственный музей изобразительных искусств имени А. С. Пушкина)は、ロシア・モスクワのヴォルホンカ通りに建つ、同市最大の西洋美術コレクションを擁する美術館である。建物自体も、20世紀初頭のモスクワを代表する新古典主義建築として知られる。
歴史
モスクワ大学教授イワン・ツヴェターエフの構想のもと、実業家ユーリ・ネチャーエフ=マリツェフらの寄付を得て計画が進められた。設計競技で1等となった建築家ローマン・クレインの案にもとづき、1898年に定礎、1912年5月に「アレクサンドル3世美術館」として開館した。当初の展示は、ヨーロッパ彫刻の石膏複製や古代エジプト美術の収集品が中心であった。詩人プーシキンとの直接の関わりはないが、その没後100年にあたる1937年に現在の名へ改称された。革命期に接収された印象派・近代絵画の一部も、のちにこの美術館の所蔵に加わっている。
建築的特徴
正面は、古代ギリシアの神殿に範をとったイオニア式のコロネード(列柱廊)で構成され、左右対称の端正な構成が新古典主義の理念を示す。展示室の採光には、技師ウラジーミル・シューホフが設計したガラス張りの片持ち屋根が用いられ、上方から自然光を導く。歴史主義的な外観の内側に、当時最先端の鉄とガラスの構造技術が組み合わされている点に特色がある。
意義・現在
プーシキン美術館は、19世紀末ロシアの市民的・学術的な美術館創設運動の所産であり、複製を通じて西洋美術史を体系的に学ばせるという教育的理念から出発した。現在はエルミタージュ美術館に次ぐ規模の収蔵を誇り、古代エジプトから近代ヨーロッパまでの作品を所蔵する。本館に加え、印象派・ポスト印象派を集めた別館などからなる複合施設として、モスクワの主要な文化拠点となっている。