ローマのクイリナーレの丘に建つ大宮殿。16世紀末に教皇の離宮として着工され、歴代教皇のもとで増改築が重ねられた。のちイタリア国王の王宮を経て、現在はイタリア共和国大統領の官邸として用いられている。
§1 — 概要概要
クイリナーレ宮殿(Palazzo del Quirinale)は、ローマの七丘のひとつクイリナーレの丘に建つ大宮殿である。16世紀後半に教皇の離宮として築かれ、複数の建築家の手で長い歳月をかけて拡張された。教皇庁の宮殿、ついでイタリア統一後の国王の王宮を経て、現在はイタリア共和国大統領の官邸として用いられている。教皇・国王・大統領という三者の主権者の座を順に務めた、ローマでも稀有な来歴を持つ建築である。
歴史
丘の上の眺望と健康的な空気を求め、教皇グレゴリウス13世が1573年ごろ離宮の造営を始めた。初期の整備には建築家オッタヴィアーノ・マスケリーノが関わり、馬に乗ったまま上れると伝わる螺旋状の斜路などを残した。その後、シクストゥス5世のもとでドメニコ・フォンターナが、さらにパウルス5世のもとでフラミニオ・ポンツィオやカルロ・マデルノが拡張に携わるなど、歴代教皇の意向のもとで増改築が重ねられた。1870年のイタリア統一後はサヴォイア家の王宮となり、1946年の共和制移行を経て大統領官邸となった。建設と改変が数世紀にわたるため、単一の竣工年を定めることは難しい。
建築的特徴
全体は、整然とした列柱や規則的な窓割りといった古典主義の語彙に貫かれている。一方で、その造営は盛期ルネサンスの規範が崩れ、マニエリスム(後期ルネサンスの技巧的な作風)からバロックへ向かう時期と重なり、各時代の手が積層している。ベルニーニの手になる長大な翼棟「マニカ・ルンガ」など、後世の付加も少なくない。広大な敷地には幾何学的に整えられた庭園が広がり、宮殿前の広場には、古代の彫刻群「ディオスクロイ(双子の騎馬像)」とオベリスクが据えられている。
意義・現在
クイリナーレ宮殿は、ローマの権力の所在を映し続けてきた建築である。教皇の避暑の宮から国家元首の官邸へという用途の変遷そのものが、近代イタリアの歩みを物語る。現在は大統領の公邸であると同時に、一部が一般に公開され、絵画・タペストリー・調度の収蔵でも知られる。ローマの歴史的中心に位置し、イタリアの国家的記念物として保存・活用されている。
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