サント・シャペル Sainte Chapelle
パリ、シテ島に立つ13世紀の王室礼拝堂。ルイ9世がキリストの聖遺物を納めるために建てた、レイヨナン式ゴシックの傑作で、壁面を埋め尽くす巨大なステンドグラスで知られる。
§1 — 概要概要
サント・シャペル(Sainte-Chapelle)は、パリのシテ島、旧王宮(現在の司法宮)の一画に立つ13世紀の王室礼拝堂である。フランス王ルイ9世(聖王ルイ)が、キリストの「茨の冠」をはじめとする受難の聖遺物を納めるために建てた。上下二層からなる構造と、上階の壁面をほぼ全面ガラスで覆う壮麗なステンドグラスで名高く、レイヨナン式ゴシックの到達点とされる。
歴史
ルイ9世は1239年、コンスタンティノープルのラテン皇帝から茨の冠を、続いて聖十字架の断片などを購入した。聖遺物の取得には聖堂の建設費の数倍にあたる巨費が投じられ、それにふさわしい器として、王宮内に礼拝堂が計画された。建設は1242年ごろに始まり、わずか6〜7年という異例の速さで進められて、1248年に成聖された。設計を担った棟梁の名は確定しておらず、伝統的にピエール・ド・モントルイユに帰せられてきたが、確証はない。フランス革命期には王権の象徴として荒らされ、尖塔や調度が失われたうえ、建物は小麦倉庫や記録保管所に転用された。19世紀にヴィオレ・ル・デュクらによる大規模な修復が行われ、現在地上約75mに達する尖塔も、このとき再建されたものである。
建築的特徴
サント・シャペルは、下層を王宮の家臣のための礼拝堂、上層を王と家族のための空間とする二層構成をとり、下層が上層の巨大なガラス壁を支える基壇の役割を果たす。上層では、構造を細い束ね柱とリブ・ヴォールトに切り詰め、荷重を外部の控え壁へ逃がすことで壁をほぼ消し去り、高さ約15mの窓を15面連ねている。窓はトレーサリーで繊細に分割され、旧約・新約の物語を1,000枚を超える色ガラスで描く。西側のバラ窓は、のちのフランボワイヤン様式によるものである。尖頭アーチと深い控え壁により、内部は「光の壁」に囲まれた宝石箱のような空間となっている。
意義・現在
サント・シャペルは、ゴシック建築が追求した「構造による軽さと光」を極限まで推し進めた作例であり、壁を構造から解放してガラスに置き換えるレイヨナン式の理念を最も純粋に示す。13世紀の原ガラスが約3分の2残ることでも貴重であり、中世ステンドグラスの最もまとまった作例の一つとされる。革命後は歴史的記念物修復の実験場ともなった。現在は国の歴史的記念物に指定され、フランス国立古跡センターの管理のもとで一般公開されている。パリのセーヌ河岸の世界遺産区域内に位置する。