聖アグネス聖堂 Sant'Agnese in Agone
ローマのナヴォーナ広場に面する17世紀のバロック教会。古代競技場跡の聖女アグネス殉教地に建ち、ライナルディ父子とボッロミーニが設計に関わった。凹面のファサードと中央ドームで知られ、広場の景観を決定づけたローマ・バロックの代表作である。
§1 — 概要概要
聖アグネス聖堂(サンタニェーゼ・イン・アゴーネ、Sant'Agnese in Agone)は、ローマの中心部ナヴォーナ広場に面して建つ17世紀のバロック教会である。古代ローマのドミティアヌス競技場跡に位置し、ここで殉教したとされる聖女アグネスに捧げられている。隣接するパンフィーリ家の邸館の礼拝堂として計画され、設計にはカルロ・ライナルディ父子とフランチェスコ・ボッロミーニという当代一流の建築家が関わった。凹面を描くファサードと中央のドームで知られる、ローマ・バロックの代表作のひとつである。
歴史
建設は1652年、教皇インノケンティウス10世の発意で始まった。広場に面するパンフィーリ家の宮殿パラッツォ・パンフィーリに隣接し、一族が宮殿からも礼拝に参加できるよう、ドームのドラム部に開口が設けられた。最初の設計は一族付きの建築家ジローラモ・ライナルディと子カルロ・ライナルディが手がけ、入口をナヴォーナ広場の側へ向け直した。しかし広場へ張り出す階段などへの批判から、1653年にボッロミーニが引き継ぎ、二塔のあいだを凹面でへこませたファサードを案出して、階段の突出を抑えた。ボッロミーニは1657年に退き、その後はふたたびカルロ・ライナルディらが工事を継いで、ドームと内部を完成させた。
建築的特徴
平面はギリシア十字を基本とする集中式で、中央に大きなクーポラを戴く。ボッロミーニによるファサードは、中央を奥へ引き込む凹面とし、その両脇に鐘塔を立てて垂直性を強調する。この凹面が、ドームと鐘塔を視覚的に押し上げ、広場から見上げたときの劇的な効果を生む。内部は色大理石と漆喰装飾、彫刻で豊かに飾られ、バロックらしい光と量塊の演出が施されている。隣のパラッツォ・パンフィーリと一体に構想された点も、都市のなかに置かれた一族の記念物としての性格をよく示す。
意義・現在
聖アグネス聖堂は、ボッロミーニとライナルディという気鋭の建築家が関与し、ナヴォーナ広場の景観を決定づけた建築として重要である。広場中央のベルニーニ作「四大河の噴水」と向かい合い、ローマ・バロックの都市空間を代表する一角を成す。現在も枢機卿助祭の名義教会であり、礼拝に用いられるとともに、ボッロミーニの聖具室ではバロック音楽などの演奏会が催されている。
関連する建築
Related※ イタリアの文化財・景観法典により、文化財の画像の商業的複製には所管当局の許諾を要する場合がある。