スパスカヤ塔 Spasskaya Tower
モスクワ・クレムリンの主塔。1491年にイタリア人建築家ソラリが赤の広場に面して築いた門塔で、17世紀に天幕屋根を戴いて現在の姿となった。頂部の星と時鐘「クレムリンの鐘」で知られる。
§1 — 概要概要
スパスカヤ塔(Спасская башня / Spasskaya Tower)は、ロシアの首都モスクワのクレムリンに建つ塔で、赤の広場(Red Square)に面した主たる門塔である。クレムリンの城壁に連なる二十の塔のなかでも最も格式が高く、頂部に輝く赤い星と、時を告げる大時計および鐘の音「クレムリンの鐘」(クレムリン・チャイム)によって広く知られる。
歴史
塔の基部は、モスクワ大公イヴァン3世の命により、ミラノ出身のイタリア人建築家ピエトロ・アントニオ・ソラリ(Pietro Antonio Solari)が1491年に築いた。当初はフロロフスカヤ塔と呼ばれ、赤の広場へ通じる城門を備えていた。1624年から1625年にかけて、ロシアの石工バジェン・オグルツォフ(Bazhen Ogurtsov)とスコットランド出身の技師クリストファー・ガロウェイ(Christopher Galloway)が、ゴシック風の天幕屋根を頂部に加え、塔は大きく高さを増した。これはクレムリンの塔に天幕屋根が架けられた最初の例である。1658年、門上に掲げられた救世主(スパス)のイコンにちなんで、スパスカヤ(救世主の)塔と改称された。頂部には長く帝政ロシアの双頭の鷲が据えられていたが、1935年にソビエト政権下で赤い星に取り替えられた。
建築的特徴
塔は赤煉瓦造を基調とし、方形の本体の上に段状の白い装飾層を重ね、その上に八角形の天幕屋根を載せる。星を含めた高さはおよそ71メートルに達する。塔の各面には大時計の文字盤が嵌め込まれ、直径約6メートルの盤面と、1851年に整えられた機構が、今日まで時を刻み続けている。鐘が奏でる旋律は「クレムリンの鐘」として国の儀礼に欠かせないものとなっている。
意義・現在
スパスカヤ塔の門は、戴冠式や公式行事に際してクレムリンの正面玄関として用いられてきた、ロシアにとって象徴的な場所である。塔を含むモスクワのクレムリンと赤の広場は、1990年にユネスコの世界遺産に登録された。赤い星と時鐘は今もモスクワの新年を告げ、ロシアを代表する景観のひとつとして親しまれている。