ヴィースの巡礼教会 Pilgrimage Church of Wies
ドイツ、バイエルン高地の牧草地に立つ巡礼教会。1745年にドミニクス・ツィンマーマンが着工し、1754年に完成した。素朴な外観の内部に、白と金と淡い色の装飾があふれる、バイエルン・ロココの傑作である。
§1 — 概要概要
ヴィースの巡礼教会(Wieskirche)は、ドイツ南部バイエルン、アルプス山麓の牧草地に立つ巡礼教会である。「ヴィース」はドイツ語で「草地」を意味する。1738年、近くの農家で木彫りのキリスト像が涙を流したとされる奇跡をきっかけに巡礼者が集まり、これを迎えるために建てられた。バイエルン・ロココの最高傑作とされ、簡素な外観と、光と装飾に満ちた内部の対比で名高い。
歴史
巡礼者の急増を受け、地元のシュタインガーデン修道院は、当代屈指の建築家ドミニクス・ツィンマーマンに教会の建設を委ねた。工事は1745年に始まり、1754年に完成した。フレスコの天井画と漆喰装飾は、兄で宮廷画家のヨハン・バプティスト・ツィンマーマンが手がけ、建築・絵画・装飾が分かちがたく溶け合っている。ツィンマーマンは完成後、この教会のかたわらに住まいを構え、晩年をここで過ごしたと伝わる。
建築的特徴
平面は楕円を基調とし、内陣を細長く延ばして奥行きをつくる。白い壁と柱が支える空間に、金箔と淡い色のロカイユ装飾があふれ、窓から差し込む光がそれを輝かせる。天井にはトロンプ・ルイユの手法で天空が描かれ、平らな天井が無限の高みへと開いて見える。構造と装飾、建築と絵画の境を意図的に曖昧にすることで、訪れる者を天上の幻影へと誘う、ロココの劇場的な空間が実現されている。
意義・現在
ヴィースの巡礼教会は、南ドイツ・ロココの到達点として、1983年に世界遺産に登録された。今日も現役の巡礼地・教会として用いられ、夏には多くの参拝者と観光客を集める。華麗ななかにも親密さを保つその内部は、バロックの壮大な劇性が、より軽やかで優美なロココへと移りゆく転換を、最もよく示す一例である。