エレバン・オペラ劇場 Yerevan Opera Theater
アルメニアの首都エレバンの中心に建つオペラ・バレエ劇場。都市計画家アレクサンドル・タマニアンの設計で、1933年に開場した。新古典主義とアルメニア国民様式を融合した近代アルメニア建築の代表作。
§1 — 概要概要
エレバン・オペラ劇場(正式にはアレクサンドル・スペンディアリャン記念国立アカデミー・オペラ・バレエ劇場)は、アルメニアの首都エレバンの中心に建つ歌劇場である。地元では単に「オペラ」と呼ばれ、二つのホール——1,400席のハチャトゥリアン・コンサートホールと1,200席のスペンディアリャン・オペラ・バレエ劇場——を擁する。近代アルメニア建築の父アレクサンドル・タマニアンの設計による、首都エレバンの象徴的建築である。
歴史
劇場の起工式は、ソビエト・アルメニア成立10周年にあたる1930年11月28日に行われた。設計はエレバンの都市計画を手がけたタマニアンによる。1933年1月20日、アルメニアの作曲家スペンディアリャンの歌劇『アルマスト』の上演をもって正式に開場した。
建設は段階的に進められた。タマニアンは1936年に没したが、その設計をもとに、息子の監督のもとで劇場ホールが1939年に完成し、建物はスペンディアリャンの名を冠した。大規模な工事がすべて終わったのは1953年で、ここに建物全体が完成を見た。開場後はバレエ団も組織され、ハチャトゥリアンの『ガイーヌ』をはじめ、数多くのアルメニア・オペラとバレエがここで初演されてきた。
建築的特徴
設計には、タマニアンが追求した新古典主義とアルメニア国民様式の統合がよく表れている。建物は円形劇場を中核とする集中的な構成をとり、古典建築の秩序立った列柱廊やペディメントを用いながら、現地産の凝灰岩(トゥフ)による石造の質感と、中世アルメニア建築に由来する装飾モチーフを織り込む。これにより、ヨーロッパ古典の語彙を借りながらもアルメニア固有の表現をもつ、独自の記念碑性が実現されている。劇場を取り巻く広場とともに、タマニアンのエレバン都市計画における中心要素の一つとして構想された。
意義・現在
エレバン・オペラ劇場は、タマニアンが構築しようとした「アルメニア国民様式」の理念を最もよく体現する建築であり、近代アルメニア建築の出発点に位置づけられる。劇場前の広場は市民の集う場として親しまれ、隣接する「白鳥湖」とともにエレバンの文化的中心を形づくっている。建物はアルメニアの文化財に指定され、現在も国立の歌劇場として活発に公演を続けている。