エルサレム旧市街、神殿の丘に建つウマイヤ朝の聖堂。691年頃に完成した現存最古のイスラーム建築であり、黄金のドームと八角形の平面で知られる。
§1 — 概要概要
岩のドーム(Dome of the Rock / قبة الصخرة)は、エルサレム旧市街の神殿の丘(ハラム・アッシャリーフ)に建つイスラームの聖堂である。ムハンマドの昇天伝承と結びつく聖岩を覆って建てられ、現存する最古のイスラーム建築とされる。礼拝のためのモスクではなく、岩を巡るための記念建築である点に特質がある。
歴史
ウマイヤ朝のカリフ、アブド・アルマリクの命により建設され、内部の銘文からヒジュラ暦72年(西暦691/692年)の完成とされる。着工年には諸説があり確定しない。以後、地震や改修を重ねながら原形の構成を保ち、16世紀にはオスマン朝のスレイマン1世が外壁を彩釉タイルで飾り直した。現在の黄金のドームは20世紀後半の改修で金色のアルミ板に葺き替えられたものである。
建築的特徴
平面は聖岩を中心に据えた八角形の集中式である。中央の岩を囲む円形の柱列がドームを支え、その外側を二重の八角形の周歩廊が巡る。この同心円状の構成はビザンティンの集中式聖堂の系譜を引きつつ、岩を周回するという巡礼の所作に空間の形式を与えたものである。内部はモザイクが覆い、植物文とアラベスク、コーランの銘文が偶像を排した装飾体系を示す。外壁のタイルはオスマン期の更新によるもので、イズニクタイルの伝統に連なる。
意義・現在
ビザンティンの技術と語彙を継承しながら、まったく新しい信仰の造形を打ち立てた点で、岩のドームはイスラーム建築の出発点に立つ。黄金のドームと青いタイルの外観は、今日までエルサレムの景観の中心であり続けている。神殿の丘一帯はユダヤ教・キリスト教・イスラームの聖地が重なる場所であり、建物は「エルサレムの旧市街とその城壁群」の一部として1981年に世界遺産に登録された。