元老院宮殿 Kremlin Senate
モスクワのクレムリン内に建つ新古典主義の宮殿。マトヴェイ・カザコフの設計で1776年から1787年にかけて建てられ、帝政期は元老院モスクワ支部が置かれた。現在はロシア大統領府が入る非公開の建物。
§1 — 概要概要
元老院宮殿(ロシア語: Сенатский дворец)は、モスクワのクレムリンの城壁内に建つ新古典主義の建築。ロシアの建築家マトヴェイ・カザコフの設計により、1776年から1787年にかけて建てられた。当初は帝政ロシアの最高司法・立法機関である元老院(統治元老院)のモスクワ支部を収めるために建設された。
歴史
建設はエカチェリーナ2世の治世下に進められた。クレムリンの不整形な敷地に合わせ、平面は三角形を基調とし、内側に中庭を抱く。革命後はソビエト政権の中枢が置かれ、レーニンの執務室が設けられた建物としても知られる。1990年代に大統領府の庁舎へと改修され、現在は一般に公開されていない。城壁の外からは、赤の広場側に面する南側の隅の一部が見えるにとどまる。
建築的特徴
建物の核となるのは、内部に設けられた円形の大広間(エカチェリーナの間)で、その上に直径約25メートルのドームが架かる。同時代の人々が「ロシアのパンテオン」と呼んだこのロタンダは、無柱の広間を覆う技術的な見せ場であり、ドームは屋上では緑色の円蓋として外からも視認でき、現在は大統領旗が掲げられる。外観はペディメントとポルティコを備えた端正な新古典主義の構成で、過剰な装飾を排し、量塊と比例で秩序を示す。
意義・現在
元老院宮殿は、エカチェリーナ朝のロシアに古典主義建築を根づかせたカザコフの代表作であり、モスクワにおける新古典主義の到達点に数えられる。その形式は各地の官公庁舎の手本ともなった。クレムリンの一部として「モスクワのクレムリンと赤の広場」の名で1990年にユネスコ世界遺産に登録されている。建物は今日も国家の中枢として機能し、その緑のドームはクレムリンの象徴的な輪郭の一部をなしている。