EST. 2026 — Editorial Archive of Notable Architecture

初期バロック

Early Baroque
年代
1580 — 1640
地域
時代
バロック・ロココ

初期バロック(Early Baroque)は、16世紀末から17世紀前半にかけて、後期ルネサンス・マニエリスムからバロックへと移行する段階に成立した建築の様相を指す。イタリアのローマを中心に、対抗宗教改革を背景として教会建築の刷新が進むなかで、ルネサンスが重んじた静的な比例と均整を保ちながらも、立面に動きと劇的な効果を導入しはじめた点に特徴がある。

ファサードには重層的なオーダーやピラスターが用いられ、ペディメントや渦巻装飾を組み合わせて中央を強調する構成がしばしば現れる。ローマのイル・ジェズ聖堂の正面や、カルロ・マデルノによるサンタ・スザンナ聖堂の正面は、こうした初期バロックの記念碑的な作例として知られる。平面は伝統的なバシリカ式を踏襲しつつ、側室列を備えた一身廊の堂が好まれ、内部は祭壇へと視線を集める求心的な構成へと向かった。光と影の対比、彫刻的な装飾、奥行きの演出といった、のちに盛期バロックで全面的に展開される手法の萌芽が、すでにこの段階に見いだせる。

アルプス以北やイタリア半島の外では、こうした初期バロックの語彙はやや遅れて、17世紀半ばに各地へと伝わった。中欧やスロベニアの修道会建築などに、その受容の跡をたどることができる。盛期・後期バロックがもたらす過剰なまでの運動感や曲面の多用に先立つ、抑制と劇性のあいだの段階として位置づけられる様式である。マニエリスムの規範崩しを引き継ぎつつ、それを秩序ある力強さへと組み替えた点に、後続のバロックへの橋渡しとしての意義がある。

初期バロック
§1

代表建築

Buildings
§2

様式の系譜

Lineage
親様式
バロック建築
本様式
初期バロック
隣接する様式