名築が収録する公開済みの建物1,244件のうち、86件には構造家や技師が設計者とならんで結ばれている。結ばれた件数が最も多いのは英国のアラップの11件で、ドイツ…
カナダ・バンクーバーの多目的スタジアム。1983年、当時世界最大の空気膜構造の屋根をもって開場し、2011年にケーブルで支える開閉式屋根へ架け替えた。2010年冬季オリンピックの開閉会式会場。
§1 — 概要BCプレイス(BC Place)は、カナダ西部ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの中心部、フォールス・クリーク北岸に立つ多目的スタジアムである。1983年、送風で室内の気圧を高めて膜屋根を浮かせる空気膜構造の屋根を載せて開場し、当時この方式による屋根として世界最大であった。2010年のバンクーバー冬季オリンピックの後、屋根をケーブルで吊る開閉式屋根へ全面的に架け替え、2011年に再開した。州の公社BCパビリオン・コーポレーション(PavCo)が所有・運営し、カナディアン・フットボール・リーグのBCライオンズと、メジャーリーグサッカーのバンクーバー・ホワイトキャップスFCの本拠地となっている。
1970年代末、エンパイア・スタジアムに代わる新競技場の構想が持ち上がり、州首相ビル・ベネットが1980年に計画を発表した。計画は1986年のバンクーバー国際交通博覧会(エキスポ86)に向けた再開発と一体で、工業地帯だったフォールス・クリークを転換する役割を担った。設計はスタジオ・フィリップス・バラット、構造設計は空気膜屋根を数多く手がけていたガイガー・バーガー・アソシエイツ、施工はディリンガム・コンストラクションで、1981年2月に着工し、1983年6月19日に開場した。1986年にはエキスポ86の開会式と閉会式の会場となっている。
2007年1月には、屋根に積もった雪に加圧操作の不具合や既存の損傷が重なって膜が裂け、管理者が意図的に屋根を収縮させる事故が起きた。しぼんだ屋根は設計どおり鋼索に支えられて客席の上6メートルで止まり、負傷者は出なかった。
2008年に大規模改修が発表され、第1期で客席や設備を更新するとともに、屋根を受ける頂部のリング梁を補強した。2010年2月から3月にかけて冬季オリンピックの開閉会式とパラリンピックの開会式に使われたのち、同年5月4日に空気膜屋根は最後の収縮を迎え、新屋根の工事が始まった。改修全体の統括はスタンテック、屋根の構造設計はガイガー・エンジニアーズ(責任技術者)とシュライヒ・ベルガーマン・パートナーが担い、2011年9月30日に再開場した。
旧屋根は、PTFE(テフロン)をコーティングしたガラス繊維の膜を、格子状に張った鋼索で押さえ、内部の加圧で持ち上げる低ライズの空気膜構造であった。膨らむとスタンドの縁から約27メートル立ち上がり、ケーブルに締め付けられた白い姿は「縛られたマシュマロ」とも呼ばれた。同系統の方式は5年後に開場した東京ドームにも採られ、外観もよく似ている。
新屋根は、既存のコンクリート製スタンドが負担できる荷重を前提に、自転車の車輪と同じ原理で張力を釣り合わせるスポークホイール構造を採った。補強したリング梁の上に36本の鋼製マストを立て、上下二段の放射状ケーブルとそれをつなぐ吊り材とで立体的なケーブル・トラスを構成する。ケーブル間にはPTFEガラス繊維の固定膜を張り、中央部を開閉部とした。開閉部は二重の膜に空気を送り込んだクッション状の膜構造で、下段ケーブル上を台車で滑って外周へ広がり、開くときは中央に吊られた大型映像装置の上の格納部へ畳み込まれる。開口はグラウンドとほぼ同じ約100×85メートルである。外周の壁はETFEフィルムで覆われ、面ごとに色を変えて照らすことができる。完成時、ケーブルで支える開閉式屋根として世界最大であった。
BCプレイスは、1970〜80年代の北米で相次いだ空気膜ドームの代表例であり、同時にその方式を手放した改修例でもある。既存の躯体を生かしながら屋根を一新し、閉じた「泡」を、光と外気を取り込める競技場へと変えた。2015年のFIFA女子ワールドカップでは決勝の舞台となり、2026年のFIFAワールドカップでも7試合を開催した。館内にはBCスポーツ殿堂が置かれている。
名築が収録する公開済みの建物1,244件のうち、86件には構造家や技師が設計者とならんで結ばれている。結ばれた件数が最も多いのは英国のアラップの11件で、ドイツ…